食品添加物 食生活

食品添加物【タール色素編】

今回は菓子類や漬物等に使用されている合成着色料のうちタール色素を考察してみました。

鮮明なお菓子は一般消費者の目を引く一方で、自然界にはない原色のお菓子を見ると体には悪いんだろうな、という印象を持つのは筆者だけでしょうか。また、このようなビビットな着色料の使用が許可されているのはなぜ何だろうとも感じました。

ラミー

原色のお菓子の方がおいしそう!

淡い自然な色のお菓子の方が目に留まるかしら

キーア

今回もニュースやYoutube等の二次情報ではなく、一次情報にさかのぼってサーチしてみました。

まず、東京都保健医療局の用途別/主な食品添加物/着色料の中で食用タール系色素(一部抜粋)について説明がありました。

食用タール系色素

食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用青色1号及び食用青色2号の12種類が指定されています。使用基準が定められ、カステラ、きなこ(うぐいす粉を除く)、魚肉漬物、鯨肉漬物、こんぶ類、しょう油、食肉、食肉漬物、スポンジケーキ、鮮魚介類(鯨肉を含む)、茶、のり類、マーマレード、豆類、みそ、めん類(ワンタンを含む)野菜及びわかめ類に使用してはならないことになっています。

 使用対象食品:菓子、漬物、魚介加工品、畜産加工品など

用途別 主な食品添加物 着色料|「食品衛生の窓」東京都保健医療局 (tokyo.lg.jp)

あまり考えたことはありませんでしたが、着色料が使用できる食材は限られており、食肉や野菜等、消費者をミスリードする可能性がある食品への添加は禁止されており、一方で、菓子、漬物等の加工品に関しては使用が許可されていることがわかりました。

つまり、消費者としては着色料が許可されていない生鮮食品はもとよりカステラ、スポンジケーキ、マーマレード等に関しては基本着色料の心配は不要ですし、一方で、着色料が許可されている菓子等の加工品を購入する際には、合成着色料(タール色素含む)が使用されている可能性があるという観点で商品を選定したほうがよさそうです。

タール色素の使用に関する前提を理解できましたので、次はタール色素が危険と言われている理由及びその危険な食品添加物が普通に菓子等に添加されている理由を探ってみたいと思います。

内閣府の食品安全委員会の食の安全ダイヤルQIII-3にてタール色素の赤2号について記述がありました。

米国では、1976年に食用赤色2号の発がん性について安全性を確認できないとして使用禁止とされましたが、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)で1978年、1984年に再評価を行いました。この結果、発がん性は認められず、許容一日摂取量(ADI)は0.5mg/kg体重/日に設定されました。現在米国など一部の国を除き、コーデックス委員会※1・日本・カナダ・EUなどで使用が認められています。

日本では、厚生労働省が毎年マーケットバスケット方式※2による添加物の一日摂取量調査を実施しています。食用赤色2号については平成28年度と令和2年度に20歳以上を対象とした摂取量調査を、平成26年度と平成30年度に1〜6歳までの乳幼児の摂取量調査を行っており、いずれの結果でも許容一日摂取量(ADI)に対し、摂取量は非常に少ないことがわかりました。

食品添加物は通常の食事から摂る量では健康影響の出ない量でリスク管理されており、実際に摂取している量は極めてわずかなので、安全上特段の問題はないと考えられます。

※1 国際食品規格委員会:1963年にFAO及びWHOにより設置された国際的な政府間機関であり、国際食品規格の策定等を行っている。

※2 厚生労働省:マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査

「食の安全ダイヤル」に寄せられた質問等Q&A(化学物質系) | 食品安全委員会 - 食の安全、を科学する (fsc.go.jp)

タール色素のうち赤色2号に関して発がん性の安全性が確認できないとして使用禁止されていたが、その後の再評価にてその発がん性が認められなかったことからADIを設定した上でその使用が許容されたという経緯があったようです。また、その後日本では厚生労働省が定期的に調査を実施ししており、その使用実績がADIに対して非常に少ないことも確認しているとのことです。

マックス

実績調査で摂取量がADIよりはるかに少ないなら、気にしなくて良いね

過去発がん性認定を受けていたのであれば、できれば避けたいわ

キーア

上記調査実績を信じ、タール色素(2号)の使用について健康リスクは限定的なので特に気にしなくてよいと捉える人もいれば、ADIを超過すると健康へのリスクの可能性があると捉えることもできます。後者については、偏った食生活をしており、タール色素の含有が多い食品を嗜好するような生活習慣を継続した結果、ADIを超過する可能性を想定しています。(従い、意識高くバランスの取れた食生活をしている人であれば放念して頂いて良いと思います)

いずれの考え方にも一理あると感じた一方、いずれかの考え方のみが正しいと判断することもできなかった為、内閣府の公表結果の根拠となっていた調査結果を確認することにしました。

厚生労働省の令和2年度に実施したマーケットバスケット方式による着色料等の摂取量調査の結果(一部抜粋)については以下の通りです。

000872729.pdf (mhlw.go.jp)

この調査結果をみて感じたのは、どの着色料もADI比で数%となっており、この数値結果からは内閣府の公表結果通り、健康リスクへの影響は限定的というのはその通りなんだろうと感じました。一方で気になった点としては、例えば過去発がん性リスクを疑われた赤色2号については摂取実績がゼロとなっており、この摂取量の結果自体が本当に実態を表しているのだろうか、という印象を持ちました。例えば、赤2号はかき氷のイチゴシロップや赤色のジュースやゼリー等の菓子類に使用されており、そのような菓子類を嗜好する人の摂取量はゼロということはならないと推察されますし、その場合においてもADIの範囲内なのかどうかという疑問は残りました。

また、赤2号に関する発がん性の疑いがあった点について上記にて触れましたが、タール色素についてはそれ以外の色素についもADIを超える場合には健康リスクの可能性が否定できないため、菓子類等着色料の使用が許可されている食品を購入する際には、成分表を確認しできる限りタール色素の摂取についてはコントロールする必要がありそうです。

ほったー

タール色素を含む菓子や加工食品を食べる機会が多い人は、摂取回数か摂取量を減らす必要がありそうだね

今回の考察の結果わかったことは以下の通りです。

健康寿命を延ばすための3つの気づき

  • 日本人の平均的な食生活をしている人(タール色素の含有が多い菓子類や加工食品の摂取が多い方を除く)は厚生労働省の調査結果に近い摂取量になると推察され、また、着色料の摂取量はADIより大幅に少ないため、健康リスクへの影響は気にしなくても良い
  • タール色素はADIを超える場合には健康リスクの可能性が否定できないため、菓子類等着色料の使用が許可されている食品を購入する際には、成分表を確認しできる限りタール色素の摂取についてはコントロールする必要がある
  • 特にタール色素の含有が多い菓子類等の摂取が多い方は特に留意する必要がある
green yellow and red candies

(参考1)農林水産省/IARCによるヒトへの発がん性評価から抜粋

  • グループ1:発がん性がある
  • グループ2A:おそらく発がん性がある
  • グループ2B:発がん性がある可能性がある
  • グループ3:発がん性については分類できない
国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について:農林水産省 (maff.go.jp)

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