今回は、トランス脂肪酸、いわゆるショートニングの健康への影響が考察内容です。
トランス脂肪酸は身体によくないというニュースを耳にしたことはないでしょうか?ショートニングは悪玉コレストロールの値を上昇するというといわれており、その真偽も含めて深堀してみました。
ショートニングって、パンだけでなくクッキー等に入っているんだよね
パンもクッキーもあなたの好物なのでしっかり調べてね
今までの考察で示してきた通り、基本的に習慣的に摂取する食品が健康への影響が大きいことを学んできているため、この添加物の影響はとても気になりました。また、考察結果次第では筆者の食生活に関するマインドセットを改める必要もあるため、慎重にサーチしていきたいと思いました。
農林水産省にてトランス脂肪酸の摂取と健康への影響を公表していた内容は以下の通りです。
日本におけるトランス脂肪酸に関して、農林水産省の「食品に含まれるトランス脂肪酸に係る食品健康影響評価」 (2012年)に触れられておりました。(一部抜粋)
トランス脂肪酸の摂取と健康への影響:農林水産省 (maff.go.jp)
- トランス脂肪酸の摂取量について、日本人の大多数がWHO の勧告(目標)基準であるエネルギー比の1%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる。しかしながら、脂質に偏った食事をしている個人においては、トランス脂肪酸摂取量のエネルギー比が1%を超えていることがあると考えられるため、留意する必要がある。
- 食品中のトランス脂肪酸含有量については、全体として近年減少傾向にあるが、一部製品においては10%を超える製品もあることから、食品事業者においては、引き続き食品中のトランス脂肪酸含有量の低減に努める必要があると考える。
- リスク管理機関においては、今後とも日本人のトランス脂肪酸の摂取量について注視するとともに、引き続き疾病罹患リスク等に係る知見を収集し、適切な情報を提供することが必要である。
農林水産省の評価においては日本人の通常の食生活の場合トランス脂肪酸については基本的に影響がないと判断している一方、脂質に偏った食事をしている個人、トランス脂肪酸の含有量が10%を超える製品の存在に触れ、最終的にはトランス脂肪酸の摂取量については注視する必要があると結論付けていました。一見、多くの日本人がトランス脂肪酸についてはあまり気にしなくてよいと捉えられるような言い回しをしておりますが、肝心なのは、「脂質に偏った食事をしている人はトランス脂肪酸の摂取量が1%以下となるように留意する必要がある点」、「脂質に偏った食事をしていなくても、一部製品においてはトランス脂肪酸含有量が10%を超えるため、その製品の摂取の取りすぎには注意する必要がある点」だと理解しました。
では、トランス脂肪酸の摂取量が一定以上を超えた場合には健康に対してどのような悪影響があるのでしょうか?健康への影響が僅少なのであればトランス脂肪酸の摂取量をあまり気にする必要はないでしょうし、一方で、健康への影響が重い(特に寿命に直接影響するような悪影響がある)のでしたら、日ごろからトランス脂肪酸の摂取量についてはかなり注意を払わないといけません。
上記と同じ農林水産省のHPにて、国際機関のトランス脂肪酸に関する評価として「食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合 (2003年)」を紹介しておりました。
トランス脂肪酸については、飽和脂肪酸(ミリスチン酸及びパルミチン酸)、塩分のとりすぎ、過体重、アルコールのとりすぎとともに、心血管疾患(CVD)、特に冠動脈性心疾患(CHD)のリスクを高める確実な証拠があるとされています。
その具体的な証拠としては、次の事項が記載されています。
- 代謝研究で、トランス脂肪酸は血液中のLDLコレステロールを飽和脂肪酸と同様に増やすだけでなく、HDLコレステロールを減らすため、飽和脂肪酸よりも血液の脂質プロファイルをアテローム性(動脈硬化などの原因となる)に変化させることが示されている。
- いくつかの大規模コホート研究では、トランス脂肪酸の摂取は冠動脈性心疾患のリスクを増やすことが示されている。
また、食品から摂取するトランス脂肪酸のほとんどは硬化油脂由来である。たとえ世界の多くの地域で消費者向けに販売される油脂やスプレッドでトランス脂肪酸の削減が行われても、揚げ物などのファストフードや焼き菓子などがトランス脂肪酸の主要な摂取源であり、それらからの摂取が増加していると報告されています。
トランス脂肪酸の摂取と健康への影響:農林水産省 (maff.go.jp)
トランス脂肪酸の摂取制限は管理していかないとまずそうね
そうだね。健康リスクの事例は比較的多くの人に当てはまりそうだしね。
トランス脂肪酸を摂取過ぎた場合、血液中のLDLコレステロールを増やし、HDLコレステロールを減らし、冠動脈性心疾患のリスクを増やすことが示されているようです。また、揚げ物などのファストフードや焼き菓子などがトランス脂肪酸の主要な摂取源となるため、外食、中食、間食が多い生活習慣の人は注意が必要となります。特にコロナ禍においては、中食がブームになりましたが、一般的なスーパーの総菜コーナーのラインナップとしては揚げ物が大半を占めており、かつ、食欲をそそる総菜も多いため、該当するご家庭も多いのではないかと考えております。
上記のような食習慣を続けた場合、最悪、(過体重、高血圧、アルコール取りすぎとセットになることで)冠動脈性心疾患のリスクを増やすこととなるため、そのような生活習慣のある人は今この瞬間から改善を開始しないといけない緊急案件です。また、トランス脂肪酸だけの観点ではないかもしれませんが、定期的な健康診断(血液検査)を受けることでコレステロール値の状況を把握することができ、対処も可能なため、定期的な健康診断と診断後のケアが必要になってくると考えております。
前述において、トランス脂肪酸の摂取量は、総エネルギー摂取量の1%に制限する必要がある旨は触れましたが、具体的にはどのくらいの量を指しているのでしょうか?
農林水産省/すぐにわかるトランス脂肪酸にて、以下の記載がありました。
すぐにわかるトランス脂肪酸:農林水産省 (maff.go.jp)
- 国際機関が生活習慣病の予防のために開催した専門家会合(食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合)は、食品からとる総脂質、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸等の目標値を2003年に公表しました。
- その中で、トランス脂肪酸の摂取量を、総エネルギー摂取量の1%に相当する量よりも少なくするよう勧告をしています。日本人が1日にとるエネルギー量の平均は約1,900 kcalであり、この1%に相当するトランス脂肪酸の量は約2グラムです。
非常に明確になりました。体系等により多少誤差はあるかもしれませんが、日本人平均としては、1日にとるエネルギー量が約1,900Kcalのため、その1%に相当するトランス脂肪酸の量が約2gと判明しました。トランス脂肪酸の1日摂取許容量はたったの2gなのです。トランス脂肪酸1日2gというのは具体的にはどのくらいの食品量になるのでしょうか?
1日摂取許容量が2gというのはかなり高いハードルのように感じるね。
次に気になった点は、どのような食品にトランス脂肪酸が多く含まれているか、という点です。
食品安全委員会が2012年3月に実施した新開発食品評価書/食品に含まれるトランス脂肪酸の一部を外食や食品等の切り口から分析したものを見つけました。
【外食編】
食品安全委員会/新開発食品評価書(2012年3月)
少々古い情報ではありますが、外食をする上での参考となるデータとなります。特に外食する機会が多い方は頭の片隅に入れておいた方が良いかもしれません。一食の分量は異なるかもしれませんが、通常の一食(同じ量)を摂取した場合、やはり洋食(特にピザ)に含まれるトランス脂肪酸は大量です。(一食あたり平均11g含有されており、1回食べるだけで何と6日間分のトランス脂肪酸を摂取することになります)ハンバーガーや洋食の場合でも一食あたり7ー8gのため、3-4日分のトランス脂肪酸相当となります。一方で、和食や中華は一食あたり2-3g程度で一日のトランス脂肪酸程度しか含まれておらず、トランス脂肪酸をコントロールするという観点からは和食か中華がオススメということになりそうです。なお、中華料理はオイリーなイメージがありましたので少し以外な結果でした。
和食も中華も好きだから問題ないわ
【食品編】
食品安全委員会/新開発食品評価書(2012年3月)
こちらでは幅広い食品についてトランス脂肪酸の含有量を調査しているようです。その中でトランス脂肪酸の含有量が多かったのは、以下の通りです。(ショートニング除く。簡便的に平均を使用)
- マーガリン(平均5-8g/100g)
- パイ(平均4.7g/100g)
- クリーム(平均3g/100g)
- クッキー/半生ケーキ(平均1.9g/100g)
- コーン系スナック菓子(平均1.7g/100g)
トランス脂肪酸の含有量が多い商品については、大方イメージ通りでした。口触りが濃く・しっとり感がある(筆者好みの)お菓子の多くはトランス脂肪酸の含有量が多いようです。パイであれば40g、クリームは60g程度で一日のトランス脂肪酸の許容量に達してしまいます。クッキー、半生ケーキ或いはコーン系スナック菓子は100g摂取可能という数値結果でした。コーン系スナック菓子はしっとり感はないですが、トランス脂肪酸の含有量が他のスナック菓子(ポテトや米等)より多いので気を付けましょう。お菓子を食べたいときは、米のスナック菓子やチョコレートを摂取することで少なくてもトランス脂肪酸の摂取量はコントロールすることができそうです。あまり意識しすぎると苦しくなってしまうので、ポイントとしては繰り返し摂取する菓子類についてはトランス脂肪酸の含有が少ないものを選択してみてはいかがでしょうか。
明日から我が家の菓子は煎餅とチョコレートになりそうだね
以上、今回の考察の結果わかったことは次の通りです。