食品添加物 食生活

食品添加物【防カビ剤編】

今回の考察対象は輸入果物等に添付される防カビ剤となります。

輸入する果物が船便等による輸送途上でカビ等にて腐ったりしないように散布されるもので、有毒性が強く、避けたほうが良いという話は誰しもが聞いたことがあるのではないでしょうか?それが事実なら、果物は基本国産のものか、防カビ剤を使用しない高価な果物を購入するしか選択がなくなってしまうことなります。物価高騰が続く昨今、家計費を抑えたい中で比較的高価格帯の果物を継続して購入し続けるというのは、あまり現実的な選択肢ではないのではないでしょうか。

Slices of fresh ripe orange

日本で食品添加物(防カビ剤)として使用が認められている7種は以下の通りです。

食品添加物(防カビ剤)

  • オルトフェニルフェノール(OPP)
  • イマザリル(IMZ)
  • チアベンダゾール(TBZ)
  • フルジオキソニル(FLD)
  • アゾキシストロビン(AZX)
  • ピリメタニル(PYR)
  • プロピコナゾール(PRP)
キーア

TBZ、IMZとOPPは聞いたことがあるわ

輸入バナナやかんきつ類に使用されている防カビ剤だね

ほったー

まず、防カビ剤に関する日本としての方針を確認してみることにしました。農林水産省による防かび剤(ポストハーベスト農薬)について(Q&A)は以下の通りです。

我が国においては、食品衛生法上、収穫前に使用する化学物質は農薬、かび等による腐敗等の防止の目的で、収穫後に使用する化学物質は食品添加物として整理しています。防かび剤を食品添加物として使用を認めているのは、あくまで使用時期による分類の違いに過ぎません。
食品安全委員会による科学的なリスク評価の結果を踏まえ、薬事・食品衛生審議会での審議を経て食品添加物として指定され、基準に適合している防かび剤であれば、安全性に問題はなく、国内で使用することが可能です

Microsoft Word - HPアップ用食QA(防かび剤) (2) (mhlw.go.jp)

端的にいうと、我々が農薬と認識しているものでも、収穫後に防腐目的で使用する場合には食品添加物として整理し、日本では許容されているということです。食品への残留農薬が問題として挙げられていることはありますが、防カビ剤については意図をもって農薬を食品に添加していることになります。この事実に対して文字ずらを拾えば、食品に農薬を添付するのはいかがなものか!と批判する人が出てくるのも一理あるのかもしれません。

この点、生産地の近郊に住んでおり鮮度が高い農産物をすぐに消費できるのが理想であり、農薬を使用せずに済むのであれば越したことはないですが、現実的には都市圏に人口は集中しており、生産地から人口密集地である売り場までのリードタイムは生じることとなり、季節にもよりますが防カビ目的でその化学物質を健康への影響が最小限となる範囲内で添加することは、カビの人体への健康リスクと天秤にかけた場合、合理的な対応方法ではないかと思いました。むろん、海外からの輸入品となればリードタイムは長くなるため、防カビ剤の添加はビジネス上の観点からも欠かせない行為だと推察されます。

そこで重要になってくるのが、防カビ剤が使用されている実態及び健康へのリスクに関する評価となります。

東京都健康安全研究センターが実施した「バナナ及びかんきつ類に使用されている防カビ剤の実態調査(2018年度~2020年度)」は以下の通りとなります。

結果及び考察

1)バナナ

バナナは,過去の調査では,TBZが果肉や全果から,IMZが全果から検出されているが, 本調査で検査した12検体は,すべてに防かび剤の表示がなく,IMZとTBZのいずれも検出されなかった。

2)かんきつ類

2018年度は29検体、2019年度は32検体、2020年度は25検体のかんきつ類を検査したが,IMZとTBZは,各年度のかんきつ類の検体数あたりの検出率が88~100%と高い傾向にあった。

OPPはアメリカ産グレープフルーツからの検出率が2018年は3検体中67%,2019年度は5検体中80%,2020年度は2検体中50%と比較的高かったが,他国産のかんきつ類からの検出は極めて少なかった。これらの結果は過去の調査結果と同様である。

AZX,FLD,PYRについて,各年度のかんきつ類の検体数あたりの検出率は,2019年度は32検体中それぞれ6%,16%,6%であり,2020年度は25検体中それぞれ20%,32%,12%であった。これらの検出率は過去の調査結果と同様である。

PRPは2018年に防かび剤として使用が許可されたばかりである。本調査では2019年度のアメリカ産レモン2検体,2020年度のアメリカ産レモン6検体から検出され,増加傾向にあると考えられるため今後も注視していく予定である。

推定

FLD,IMZ,OPP,PYR,TBZのEDI(推定一日摂取量)/ADI(一日摂取許容量)比は,0.2~5.6%と十分に低い値であった。このため,洗浄せず皮ごと食べたとしても安全性に問題はないと考えられる。今回調査した防かび剤のうちAZX,IMZ,FLD,OPP,TBZは皮に偏在することが報告されているため,果皮を除去して食べれば,防かび剤の摂取量をかなり抑えられると考えられる。

32_osuga.pdf (tokyo.lg.jp)

東京都では輸入果物等に関する防カビ剤の残留状況の調査を定期的に実施しており、上記は2018年から2020年の実績に基づく評価となります。纏めると以下の通りです。

  • 過去の調査では大部分のバナナからTBZやIMZが検出されていたが今回の調査では双方検出なし
  • 大部分のかんきつ類からはTBZ及びIMZ、米国産の過半数でOPPが検出された。AZX、FLD、PYRは過年度と変わらず1-3割程度から検出され、PRPは件数は少ないが増加傾向。
  • FLD,IMZ,OPP,PYR,TBZはADIの範囲内(5%程度未満)のため、洗浄せず皮ごと食べても安全な水準
  • AZX,IMZ,FLD,OPP,TBZは皮を除去すれば防カビ剤の摂取量を大幅に削減可能

上記の調査結果に関しては、正直意外なものでした。特にバナナに関してはTBZやIMZ等の使用表示をしていないバナナが散見されている一方、実際にはそれらの防カビ剤を使用していないと考えていたからです。今回の調査報告ではそれらの防カビ剤を添付しない代わりに他の防カビ剤が添付されていたのか、或いは、技術的な進歩で防カビ剤が不要となったのか、原因追及までは至っていなかった点は個人的は気になりました。

また、一部の防カビ剤についてはADIの範囲内のため、洗浄せずに皮ごと食べれると結論づけてはいましたが、洗浄により30%から70%の除去(東京都ウェブサイト「東京都食品安全FAQ」)が期待されるようなので、洗浄することで防カビ剤の健康への影響は限定的になるのではないかと思いました。

なお、果物等に貼付されているPLUコードにて、5桁9番から始まる数字はオーガニック(有機栽培)、5桁8番から始まる数字は遺伝子組換え、となるため、果物の栽培までの農薬使用の有無が気になる人は購入時に確認されても良いと思います(参考1)。さらに、カエルのマーク「レインフォレスト・アライアンス」が付されたバナナ等を見かけますが、こちらの商品も基本的には上記5桁9番(オーガニック)に近いですが、上位互換で農場からレジまでの過程で地球環境に良い影響を与える商品に限りお墨付きを与えているようです。

ほったー

洗浄し、皮を除去することで防カビ剤の健康リスクは抑えられることがわかったね

農薬のこともあるのでPLUコードが9番から始まるものを買うようにするわ

キーア

今回の考察の結果わかったことは以下の通りです。

健康寿命を延ばすための3つの気づき

  • バナナに関してTBZやIMZ等の防カビ剤の使用が表示されていない場合には基本防カビ剤を気にせずに摂取可能。(通常バナナはTBZやIMZが偏在する皮は摂取しないため)
  • かんきつ類に関して大部分からTBZやIMZ、米国産からはOPP、その他4つの防カビ剤のいずれかが使用されているが、皮を洗浄或いは皮を除去した上で摂取することで防カビ剤の大部分を取り除くことが可能であり、結果として健康リスクを僅少化することが可能
  • 果物の出荷前までの栽培過程における農薬使用をコントロールしたい場合には、PLUコードの5桁9番から始まる数字はオーガニック(有機栽培)或いはカエルのマーク「レインフォレスト・アライアンス」が付されたものを推奨
bananas, fruits, food

(参考1:平成 16 年度/農林水産物貿易円滑化推進事業/ 貿易情報海外調査報告書P17から一部抜粋)

PLU コードは、通常、出荷する生産者(団体)または卸売業者がシールを作製し、商品を流通させる際に個々の個体に貼り付けるか、商品が梱包された箱に商品の個数分のシールを同封し、小売店等で個別に貼り付けることが多いが、小売店でシールを作製する場合もある。
番号は、通常4桁で、オーガニック(有機)の場合にはこの 4 桁の数字の頭に“9”を、遺伝子組換えの場合は“8”を加えることとされている。

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