Group 1 食品添加物 食生活

食品添加物【清涼飲料水編】

今回は夏の暑い時だけではなく、リフレッシュしたいときもつい飲みたくなる清涼飲料水に含まれる食品添加物のお話しです。

飲んだ後はすっきりした気分でいる裏では、少しずつ体を蝕んでいるということがあったらぞっとしますよね。また、健康番組等では水かお茶が健康に良い!という話も良く聞くと思います。もちろん、甘く無い飲み物の方が体によさそうというイメージはあるものの、明確にその理由を把握している人は少ないのではないでしょうか?ということで、今回は清涼飲料水などに含まれることが多い食品添加物である安息香酸ナトリウムを考察してみたいです。

tin can, water, drop of water
キーア

安息香酸ナトリウムってどんなものなのかな?

自然の食品にも含まれる、保存料の一種だよ

ほったー

安息香酸ナトリウム自体は塩の一種で多くの自然の食品に含まれている保存料の一種であり、それ単体で体に深刻な害をもたらす添加物ではなさそうです。では、なぜ世間では体に悪い!と不安をあおるような言われ方をしているのでしょうか?

本考察サイトのモットーはできる限り、調査結果等事実に基づく情報源を探ることです。少しサーチを進めたところ、平成18年の厚生労働省の公式情報を見つけることができました。(一部抜粋)

1,経緯
 本年春以降、英国等諸外国で、清涼飲料水中の安息香酸(保存料)とアスコルビン酸(酸味料、酸化防止剤。ビタミンC)が、ある条件下で反応しベンゼンが生成すること、市販製品中にベンゼンが低濃度検出されること等が公表され、英国等ではベンゼン10ppb*を超える製品の自主回収が要請された。

(注)ppb: 10億分の1の分率のこと。

【用語説明】(一部抜粋)
 ベンゼンの健康影響に関しては、本物質は、IARC(国際がん研究所)が、「ヒトに対して発がん性がある」(グループ1)として分類しています

安息香酸は1608年に発見され、静菌作用があることから、古くから保存料として用いられているものです。我が国では1948年に食品添加物として「安息香酸」及び「安息香酸ナトリウム」が指定されています。それぞれに使用できる食品と使用できる量(使用限度)が定められており、清涼飲料水に対する使用限度は、いずれも安息香酸として、0.60g/kgまでとされています。

厚生労働省:清涼飲料水中のベンゼンについて (mhlw.go.jp)
キーア

安息香酸ナトリウムが化学反応を起こして生じるベンゼンが危険なんだね。

英国等の諸外国で、清涼飲料水に含まれる安息香酸とアスコルビン酸(ビタミンC)がある条件下で反応しベンゼンが生成し、そのベンゼンが体に害をもたらす可能性があるため、自主回収がなされるまで至ったわけです。IARCがグループ1として発がん性がある認定しているのであればその危険性を認識するのは自然ですし、IARCの認定結果に基づき自主回収がされたというニュースを聞けば、一般消費者が敏感になるのは普通の反応だと思いました。

また、日本においては昔からその使用が許可されており、ベンゼンの摂取基準量は10ppb(水道水の基準値)であり、安息香酸ナトリウムの使用許容量は0.60g/kgとされております。水道水には微量ですがベンゼンが含まれているものの、生活する中で一般的に想定される摂取をする限りにおいては健康へのリスクは基本生じないと推察されます。(その前提で厚生労働省は摂取基準を設定し、水道局はその基準を充足する形で水道水を提供しているはずだと考えております)

従い、我々一般消費者は化学反応後のベンゼン含有量を調査することは通常できないため、自らでマネジメントできることとしては、「ある条件下」を避けることと、安息香酸の摂取量が一日「0.60g/kg」を超過しないようコントロールすることになりそうです。

ある条件下

まず「ある条件下」について、厚生労働省の資料では明記されておりませんでしたが、U.S. Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)の2007年の調査結果(QA)にて確認することができました。

How does benzene get into beverages? 

Exposure to heat and light can stimulate the formation of benzene in some beverages that contain benzoate salts and ascorbic acid (vitamin C). (一部抜粋)

Questions and Answers on the Occurrence of Benzene in Soft Drinks and Other Beverages/U.S. Department of Health and Human Services

このQAの中では、「ベンゼンがどのようにして飲料に含まれるのか?」という問いに対して、「熱や光にさらされると、安息香酸塩とアスコルビン酸(ビタミンC)を含む一部の飲料でベンゼンの形成が促進される可能性がある」と回答されており、「熱や光に晒される」ことを避ける必要がありそうです。具体的には、安息香酸ナトリウムとアスコルビン酸(ビタミンC)を含む清涼飲料水を、加熱したり、日が当たる場所に置くと、ゲンゼンが生成される可能性があることのようです。

通常、ビタミンCと安息香酸ナトリウムを含む清涼飲料水を加熱したり日が当たる場所におくことはないのであまり気にしなくてもよいのかもしれません。ただし、安息香酸ナトリウムとアスコルビン酸(ビタミンC)を含む清涼飲料水を長期間日が当たる場所で保管する場合には「ある条件下」に抵触する可能性があるため、注意が必要です。つまり暗所保管が推奨されると思われます。なお、本件とは直接関係ないかもしれませんが、加熱する料理に使用する調味料(しょう油等)で安息香酸ナトリウムとアスコルビン酸(ビタミンC)が含まれるものを使用する場合、形式的には「ある条件下」に該当することとなるため、使用量には気を付けたほうがよいかもしれません。

キーア

今度から冷蔵庫か引出しの中で保管するようにするわ!

安息香酸の摂取量

次に、日本では安息香酸ナトリウムの使用許容量は0.60g/kgとのことですが、我々はどの程度摂取しているのでしょうか?

上記に関し、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会報告(令和元年7月)の資料にて、平成30年度において公表されていた清涼飲料の安息香酸の摂取量調査結果が役に立ちそうです。

000603348.pdf (mhlw.go.jp)

上記調査では、表2にて飲料種別の安息香酸(安息香酸ナトリウム)の含有量を占めすとともに、表3にて年齢層別の安息香酸の推定一日摂取量を取り纏めています。また、表3の一人当たりの一日摂取許容量(ADI)を年齢層別の平均体重に基づき試算されております。(なお、全年齢層平均55.1Kg×5mg/kg=約275mgとなることから、本調査では現状の使用許容量600mg/kgより保守的な設定)

加え、この調査結果によると、小児、学童及び青年(1歳~19歳)のうち摂取量が多い順位の層に関してはADIに近い数値となっているものの、いずれの年齢層においてもADIの範囲内であり平均的な生活習慣をしている限りは特に健康への影響を気にする必要はなさそうです。

一方で、清涼飲料水のうち、炭酸飲料果実色(無果汁)及び栄養ドリンク等、安息香酸ナトリウムの含有量が多いものを習慣的かつ多量に摂取する生活習慣の方は注意する必要があることも同時に示していると思われます。また、基本的にADIは体重に比例するため、体重が各年齢の平均値より多ければ、少なくてもADIの観点からは許容量も拡がるようです。

ほったー

仕事が忙しい時期に栄養ドリンクやエナジードリンクを飲みすぎないように気をつけようかな

以上、今回の考察の結果わかったことは次の通りです。

健康寿命を延ばすための3つの気づき

  • 安息香酸ナトリウムとアスコルビン酸(ビタミンC)を含む清涼飲料水を保管するときは、暗所保管が推奨(基本冷蔵庫)
  • たまに(1週間に1本程度)安息香酸ナトリウムとアスコルビン酸(ビタミンC)を含む清涼飲料水を飲む程度であれば健康への影響は特に気にする必要はない
  • 一方、習慣的(毎日)特に炭酸飲料果実色(無果汁)及び栄養ドリンク等の安息酸ナトリウムの含有量が多い清涼飲料水を飲む方はコントロールしたほうが良い!(IARC評価でグループ1であることからも習慣的に大量摂取する場合には危険度高い
beverages, bottles, shelf

(参考1)農林水産省/IARCによるヒトへの発がん性評価から抜粋

  • グループ1:発がん性がある
  • グループ2A:おそらく発がん性がある
  • グループ2B:発がん性がある可能性がある
  • グループ3:発がん性については分類できない
国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について:農林水産省 (maff.go.jp)

(参考2)添加物の使用基準(令和3年2月改正迄反映/公益財団法人 日本食品化学研究振興財団)

使用基準(R03.02.03).xlsx (ffcr.or.jp)

-Group 1, 食品添加物, 食生活