今回の考察ではアイスクリーム、ゼリー等のデザートやコンビーフ等の肉製品に含まれるカラギーナン(ゲル化剤)に関するお話しです。
デザートや肉製品の粘着性を出す為に使用されているカラギーナンの危険性についてはあまり認識もなかったのですが、他の食品添加物、例えば人工的に自然物と同じ効能を作り出した人工甘味料等が健康へのリスクがあったように、人工的に作り出したねっとり感を付加する代償として健康への影響もあるのかもしれないと思い、調べてみることにしました。
カラギーナンは、主に紅藻類スギノリ目から抽出される多糖類だよ
早速ですが、カラギーナンが危険だといわれている理由をサーチしてみました。
国際がん研究機関(IARC)にてカラギーナンを検索したところ、すぐにヒットしました。
List of Classifications – IARC Monographs on the Identification of Carcinogenic Hazards to Humans (who.int)
カラギーナンの分解物(ポリギーナン)がグループ2B(発がん性がある可能性がある)ものとしてリストアップされておりました。
他の添加物でも良くあるパターンですね。カラギーナンそのものの危険性ではなく、カラギーナンの分解物として生成された物質が体に有害の可能性があるということがわかりました。カラギーナンとしての安定性や分解され危険な状態になるかどうか、という点が評価に影響しそうなことが推察できますね。
IARCだけではなく他の研究機関の評価もリサーチしてみたいと思います。
グループ2Bになるなら避けたほうが良いのかな
カラギーナンそのものではなく、分解物という部分は気になるね
EFSA(欧州食品安全機関)ではカラギーナンに関してADI(一日の摂取許容量)を75mg/kgと定めていましたが、それに関して2018年に「カラギーナン(E 407)と加工海藻(E 407a)の食品添加物としての再評価」が公表されていました。(要約から結論を抜粋)
Overall, taking into account the lack of adequate data to address these uncertainties, the Panel concluded that the existing group acceptable daily intake (ADI) for carrageenan (E 407) and processed Eucheuma seaweed (E 407a) of 75 mg/kg bw per day should be considered temporary, while the database should be improved within 5 years after publication of this opinion.
Re‐evaluation of carrageenan (E 407) and processed Eucheuma seaweed (E 407a) as food additives - - 2018 - EFSA Journal - Wiley Online Library
この再評価においては、カラギーナンの健康リスクを認めADIを設定した過去の評価に関して、その評価のためのデータが不十分であり、現在設定しているADIは一時的なものとして、5年に改善すべきであると結論付けておりました。その理由として、カラギーナンの分解物であるポリギーナンの食品添加物としての許可を否定しつつ、分解前のカラギーナンに関しては毒性に関しては限定的とされる再評価であったこととされておりました。
この再評価の根拠としては、分解前のカラギーナンの状態で食品添加がされた場合、その後カラギーナンが分解されることはないという前提があるのだと推察されます。つまり、カラギーナンとその分解物であるポリギーナンとは別物であり、分解前のカラギーナンであればその毒性は限定的ということになるようです。
この点筆者として気になったのは、カラギーナンが分解されるのはどのようなケースなのか?、食品にカラギーナンに添加した場合調理方法や摂取後に分解されることはないのか?という点です。
Wilipedia(2023年11月27日時点)にて複数の文献を根拠に、カラギーナンのリスクに関し以下の通り結論づけておりました。(一部抜粋)
- 多くの動物実験はヒトでは不可能なレベルの大量投与により行われている
- カラギーナンによる発がんプロモーション作用はげっ歯類特有の腸内細菌叢による証拠がある
- カラギーナンによる炎症はサルでは容易に起きない
などの理由から、カラギーナンによる悪影響はげっ歯類の特殊な性質であり、ヒトでは問題ないとする考えが現在では有力である。これに基づきFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives, JECFA) の第57回会議(2001年)では、1日許容摂取量を「特定せず」(つまり毒性リスクは事実上ゼロとみてよい)と決定した。
カラギーナン - Wikipedia
- World Health Organization, Geneva , 1999. IPCS - International Programme on Chemical Safety: Carrageenan (addendum).
- WHO Food Additives Series: 48. Safety evaluation of certain food additives and contaminants; Carrageenan and processed eucheuma seaweed (addendum).
- Carthew, P. (2002). "Safety of Carrageenan in Foods & Joanne K. Tobacman: Carrageenan in Foods: Response". Environmental Health Perspectives 110(4).
- Cohen, Samuel M; Ito, Nobuyuki (2002). “A critical review of the toxicological effects of carrageenan and processed eucheuma seaweed on the gastrointestinal tract”. Critical reviews in toxicology (Taylor & Francis) 32 (5): 413-444. doi:10.1080/20024091064282. PMID 12389870.
カラギーナンの毒性については、検査特有の前提(現実的には起きえない大量投与)や人間には当てはまらない考察(げっ歯特有の腸内細菌による分解を前提)にしており、人間が通常量を摂取する限りにおいてはカラギーナンが分解されることもなく、カラギーナン自体の毒性も限定的であるという主張になるようです。
なお、カラギーナンの安全についてはグレーな部分もあり、その分解物には毒性が認められているものの、通常に摂取する限りにおいては分解されることもなく毒性もないという着地となっておりました。筆者がサーチした範囲内では信頼できそうな公式研究結果等にて温度による分解に関し触れたものがヒットしませんでしたが、今後研究が進むことで例えば所定の調理をすることでカラギーナンが分解され健康へのリスクが心配されるケースも出てくるかもしれません。そのような不透明なことに関しても不安を感じる場合には、ゲル化剤(増粘剤)には代替となる寒天等、無害な天然由来の添加物もあるため、成分表示を確認し納得できる商品を購入することをおすすめします。
カラギーナンとしての毒性については気にすることはなそうね
ただし、グレーな部分もあるので子供には食べさせないほう良いかもね
今回の考察の結果わかったことは以下の通りです。
(参考1)農林水産省/IARCによるヒトへの発がん性評価から抜粋
国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について:農林水産省 (maff.go.jp)
- グループ1:発がん性がある
- グループ2A:おそらく発がん性がある
- グループ2B:発がん性がある可能性がある
- グループ3:発がん性については分類できない