今回はダイエットの最強のお供であるナッツに関する考察となります。
ナッツに関しては、食物繊維が便秘予防、ビタミンB群やビタミンEによる代謝改善、不飽和脂肪酸によるコレストロール抑制等、生活習慣を改善する食品の一つとしてそのメリットは広く伝わっていると思います。ところが、ナッツ等に付着する、あるものが体に深刻な影響を与える可能性があるという情報を耳にしたため、今回は考察してみたいと思います。
ナッツは体重コントロールに必須なアイテムだから悪評は困るよ
私も仕事の間食として愛用しているのでしっかり実態解明するよ!
ナッツに付着する可能性があるもの(そして防ぐことも難しいもの)は、カビです。まずは、カビに関して、農林水産省にて基礎的な情報が公開されていたので確認してみました。
かび毒とは、植物病原菌であるかびや貯蔵穀物などを汚染するかびが産生する化学物質で、人や家畜の健康に悪影響を及ぼすものをいいます。かび毒のことを "マイコトキシン(mycotoxin)" ということもあります。(一部抜粋)
日本でも、麦類の生産段階や貯蔵段階におけるデオキシニバレノール、ニバレノールの汚染低減やりんご果実の生産、流通段階やりんご果汁の流通、製造段階おけるパツリン汚染防止に取り組んでいます。また、総アフラトキシン(農産物を含む全ての食品)、アフラトキシンM1(乳)、デオキシニバレノール(小麦)、パツリン(りんご果汁)については、食品衛生法に基づく基準値などが設定されています。(一部抜粋)
かびとかび毒についての基礎的な情報:農林水産省 (maff.go.jp)
かびについてはもちろん、我々消費者からみてもそれが健康に害があることは知っておりますし、カビが付着した食品は捨てているが普通だと思いますが、国として市場に出る前に商品がカビ毒に侵されないような管理基準を設定しており、それに関する説明となっておりました。
かび毒=マイコトキシンを言われており、農産物等に関し生産段階や貯蔵段階にて発生するもので、国としても一定の基準を策定しその過程においてかび毒が発生しないようにコントロールしていることがわかりました。
消費者からみるとスーパー等にて販売されている食品にカビが付着していないのがあたりまえ、だと思っているこの常識の裏では農林水産省が定めたルールに従い、輸入、輸送、保管がされており、その道中で商品がカビが付着しないようなインフラが整備されていることに気づかされました。同時に、かびが産出するかび毒を重くとられていることも理解することができました。
ナッツに付着するかび毒にはどのようなものがあるのかな?
ナッツに係るかび毒と食品等をまとめた図(抜粋)は以下にあるよ
かびとかび毒についての基礎的な情報:農林水産省 (maff.go.jp)
上記一覧からは、ナッツ類は”アフラトキシン類”のかび毒の影響があることがわかります。ナッツ類の他には、穀類、乾燥果実及び牛乳も汚染される可能性があるとされております。特に牛乳は生ものであり、消費期限が厳格に管理させている理由はかび毒を念頭に置いたものだったのかもしれません。一方、ナッツ類、穀類及び乾燥果実は基本海外からの輸入品となり、かつ、海路による輸送途中のかび毒の汚染リスクがあるため、その点注意が必要になりそうです。
それでは、”アフラトキシン”のカビ毒による健康リスクはどの程度なのでしょうか。信頼しうる公式な調査結果をリサーチしてみたいと思います。
国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について:農林水産省 (maff.go.jp)
上記はIARCが公表している発がん性分類の抜粋(農林水産省HPから引用)となります。
アフラトキシンは最も危険順位が高いグループ1(ヒトに対して発がん性がある)に属するものとして認定されており、人体への毒性は強いと捉えたほうがよさそうです。人間に関して発がん性物質の重要な影響を示すことが立証されており、かつ、動物実験においても発がん性が立証されていることから、アフラトキシンのかび毒については細心の注意を払わないといけなそうです。ちなみに本件とは関係ないですが、グループ1で例示されている”アルコール飲料”や”ベンゼン”(安息香酸ナトリウムから分解)に関しては、別回にて考察していますのでもし良かったらそちらの記事も読んでみてください。
グループ1と聞くと食べるのがこわくなっちゃうね
必ずかびが付着しているわけでもないし、何か解決手段があるかもしれないよ
他の食品添加物の考察では摂取量をコントロールすることで、発がん性のリスクをマネジメントするアプローチもしておりましたが、今回の食品に付着するカビに関してはどのように向き合えばよいのでしょうか?農林水産省HPにてそのヒントとなる情報がありましたので見ていきましょう。
食品にかびが生えているかどうかは肉眼で確認できる場合もありますが、かび毒が含まれているかどうかは見た目ではわかりません。かびそのものは加熱などにより死滅しますが、かび毒の中には比較的熱に強く、通常の加工・調理では十分に減少しないものもあります。(一部抜粋)
かびとかび毒についての基礎的な情報:農林水産省 (maff.go.jp)
パン等の食品であればカビは肉眼で確認できる場合もあり廃棄が可能ですが、このカビは食品中に発生するため基本目視で発見することはできず、また、熱にも強いという特徴があり、加熱処理しても十分に分解することはできない=発がん性リスクを低減化する程度に減少することができない、ようです。
一般的には、一定の温度にて調理することで分解することで有害なのが無毒化、或いは、無害なものが有毒化するケースが多く、有害化しない設定温度による調理方法を選択することで、発がん性リスクを一定程度マネジメントすることができる、と認識しております。一方で、上述の通り、ナッツ類に影響のあるアフラトキシン(かび毒)に関しては、加熱処理による影響がないことからこの一般的なアプローチによるコントロールは期待できなさそうです。
国際的なリスク評価機関であるFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)は、アフラトキシン類は人の肝臓に発がん性があるとし、アフラトキシン類の中でもアフラトキシンB1を最も強い発がん性を有する物質としました。アフラトキシン類による健康リスクを低減するため、 摂取量を可能な限り低減すべきとし、特に、B型肝炎表面抗原陽性者では、陰性者に比べて肝がん発症率が高いため、アフラトキシン類の摂取量を減らすことが肝がんリスク低減に有効であると勧告しました。
いろいろなかび毒:農林水産省 (maff.go.jp)
農林水産省の”いろいろなかび毒”においては、JECFAによるリスク評価として、「アフラトキシン類による健康リスクを低減するためには、摂取量を可能な限り低減すべき」とコメントがありました。現状は、アフラトキシンの発生リスクを低減されるように安全に管理されているナッツを摂取するか、ナッツの摂取量を低減するか、のいずれかの方法になりそうです。(少なくても前者に関しては、例えば生産地の近くに居住でかびの発生リスクが低い新生なナッツを摂取できる、或いは、コスパ無視で完全な安全管理システムにて納品体制が拡充された高級なナッツ等でなければ難しそうな印象を受けました)
ナッツの摂取量を低減する以外に、健康リスクの低減を図る方法がないのか、もう少しサーチしてました。
私たちの実験系で、AF-2やトリプP-1など、さまざまな発がん物質は活性酸素生成物 質であることを突き止めた。だから唾液の毒消し作用とは 、つまるところ、活性酸 素を唾液のペルオキシダーゼで消去していることになる。 だから、よく噛んで食べ れば、唾液が活性酸素を消去し、がん予防につながると考えられる。・・・・少なくても一口食べ物を口に入れたら少なくても30回かむこと。
日本咀嚼学会雑誌 Vol. No1(1991年)「咀嚼とがん予防/唾液による活性酸素消去の研究から/西岡一/同志社大学工学部生化学研究室」
なんと、驚くべき発見です。日本咀嚼学会雑誌の記事となりますが、唾液の中に含まれるペルオキシダーゼを活用しよく噛んで食べることで発がん性物質を無毒化あるいは相当程度の弱体化が期待できるという研究結果となります。目安としては、1口30回とのことで、早食いの習慣がある人にとってはハードルが高いものの、お金をかけず、マインドセットの変更で健康寿命を延ばす期待がもてるのであればやらない手はありません。なお、ペルオキシダーゼは55歳を過ぎると下り坂に入り高齢者は一般的に毒消し力が弱わまる旨の記述もありました。加え、厳密にはペルオキシダーゼは個人差があるため、気になる人は一度測定されることをお勧めします。
- 55歳未満は1口30回の咀嚼習慣を意識すること
- 55歳以上も1口30回の咀嚼習慣を意識しつつ、かつ、摂取量を少しずつ減らした方が良い
良く噛んで食べることが最も効果的な毒消しなんだね!
あなたは早食いなので明日からがんばってね。
以上、今回の考察の結果わかったことは次の通りです。
(参考1)農林水産省/IARCによるヒトへの発がん性評価から抜粋
国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について:農林水産省 (maff.go.jp)
- グループ1:発がん性がある
- グループ2A:おそらく発がん性がある
- グループ2B:発がん性がある可能性がある
- グループ3:発がん性については分類できない